
――前編では、なぜ山一ハガネと北海道機販(以下:機販)がグループ企業になったのかを両社の経営層に聞いた。後編は「山一ハガネってどんな会社なの?」を人事Sec.のお二人に直撃取材!
【株式会社山一ハガネ】

人事Sec.マネージャー
加藤英樹

人事Sec.主任
小崎文菜
【北海道機販株式会社】

取締役 総務部長
鈴木淳也

総務部副部長
梅田雅人

総務部担当課長
土場友加里
山一ハガネでは現在、主に以下の事業を展開している。
生産材事業
小崎:生産材事業では、製造業に必要な材料を幅広く取り扱い、お客様の生産現場を支えています。
主な取り扱い材料は、帯鋼、線材、棒鋼などで、これらは自動車部品や精密機器、工具など、さまざまな製品に使われています。
具体的には、線材はコイルばねやリング、帯鋼はプレス加工を経て板ばね、棒鋼はシャフトやネジといった部品に加工されます。

生産材事業の商材である棒鋼
メーカーから材料を仕入れ、自社の倉庫で保管し、必要なタイミングで供給する柔軟な体制が当社の特徴ですね。
この仕組みにより、お客様の在庫負担を軽減し、効率的な生産をサポートしています。
また、材料の特性を熟知した営業と現場のチームワークで、お客様に最適な提案を行い、製造現場での課題解決にも貢献しています。
さらに、急な仕様変更や特注品への対応も可能であり、多様なニーズに応えられる広範な在庫管理と、迅速な供給体制が当社の強みです。
この事業は、単なる材料供給にとどまらず、お客様のモノづくりを支える重要な役割を果たしているんですよ!

初めて見る線材に興味津々の土場と梅田
梅田:幅広い材料を取り扱い、それを効率的に供給できる体制があるからこそ、モノづくりの現場にとって心強い存在なんですね。
一世紀の歴史で材料を熟知した山一ハガネだからこそ提供できる価値だと感じます。
工具鋼事業
小崎:工具鋼事業は、山一ハガネの創業時から続く伝統ある事業であり、特殊鋼を材料とした切断・加工を中心に展開しています。
当社では、お客様のご要望に応じた寸法に切断し、切断後にはフライス加工や穴あけ、磨きなどの仕上げも行っています。
鋼材は赤や白など色分けされており、混同を防ぐ管理体制も徹底しているんです。

鋼材を切断中の切断機
また、当社の大きな特徴が「KV3」と呼ばれる鋼材自動切断システムです。
見てください、この大きさ!ビックリするでしょう?(笑)
高さ10メートル、幅50メートルの巨大な設備で約540トンもの鋼材を一度に管理し、3台の切断機が連続稼働できる体制を構築しています。
全自動化されたシステムにより、短納期対応を可能にしており、特急案件にも柔軟に対応しています。
このように、切断から加工、在庫管理まで一貫して対応できることが、当社の工具鋼事業の大きな強みです。

そのスケール感に圧倒される鋼材自動切断システム「KV3」
土場:スケールに圧倒されます!
このようなシステムがあることで、効率的な運用と短納期対応が実現できているんですね。
歴史ある事業でありながら、こうした技術も積極的に取り入れている所が山一ハガネらしいと思いました。
熱処理事業
小崎:熱処理事業では、金属材料の硬度や粘り強さを調整するための「焼き入れ」や「焼き戻し」を行っています。
1,020度まで加熱する焼き入れと、適切な硬さに仕上げる焼き戻しを組み合わせることで、用途に応じた素材の特性を引き出します。
この技術は自動車部品や工具、精密機器部品など、幅広い分野で必要とされているんですよ。

静かで綺麗な山一ハガネの熱処理工場
熱処理工場では「サイレント&クリーン」をコンセプトに、汚れや騒音を抑えた環境での作業を実現、
真空炉の導入により、従来の熱処理工程に伴う環境負荷を大幅に軽減し、クリーンな作業を可能にしています。
また、材料の知見を活かし、経年変寸(時間経過による寸法変化)に関するテストを重ね、熱処理技術を向上させているんです。
過去の分析データを基に、適切な温度帯で経年変寸を最小限に抑えるノウハウを確立、国家資格を取得した技術者が品質を保証します。
特殊な要件や複雑な仕様にも対応できる体制を整えています。

熱処理の現場を率いるマネージャーの南方さん
鈴木:本当に静かで綺麗な工場なので驚きました!
環境配慮型の設備を活用しながら、メンバーの皆さんが国家資格を積極的に取得され、品質を保証する体制がしっかりしているのが素晴らしいです。
AEROV(エアロフ)
小崎:山一ハガネの誇る技術開発センターがAEROVです。
高精度な金属加工技術と測定能力を融合させた工場で、HERMLE社やYASDA社の高精度5軸マシニングセンタを複数導入しており、数ミクロン単位での加工を可能にしているんです。
この設備により、自動車や航空宇宙分野の厳しい品質基準にも対応し、高性能かつ複雑な部品を加工しています。

多くの高精度金属加工機を持つAEROV内部
さらに、ISO17025試験所認定を取得している点も大きな特徴です。
これは、測定の正確性と信頼性を保証する国際基準で、恒温恒湿環境下での測定を徹底することで、誤差を最小限に抑えた高精度なデータを提供しています。
国内では希少な超大型の接触式高精度三次元測定機Leitz「PMM-G」を駆使し、最大5,000mm×4,000mm×3,000mmの大物部品の測定を行い、発行される検査証明書はWTO加盟国でも通用するんです!

またまたそのスケール感に圧倒される超大型三次元測定機Leitz「PMM-G」
当社では材料選択から切断、加工、熱処理、測定、物流までを一貫して行える体制が整っており、これを「ファクトリーモール」と呼んでいます。
これが他社にはない、当社独自の大きな強みです。

約一世紀の歴史の中で築き上げた山一ハガネの「ファクトリーモール」
例えば、フィギュアスケート用ブレード「YS BLADES」は、ファクトリーモールを象徴する自社製品で、材料の知見から加工、熱処理、測定…当社の持つ技術すべてを集約することではじめて作ることができます。
10キログラムの素材を270グラムにまで削り出すことで、極限の軽量化と精密性を両立させています。
こうした技術はスケーターのパフォーマンス向上に直結しており、多くの注目を集めています。
YS BLADESで当社を知ってくださる方も多いんですよ!


AEROVで製造中のYS BLADESと完成品をチェックする開発者の石川さん
土場:YS BLADESはここで作られているのですね!大型測定機のスケールにもビックリしました!!
製造から測定、品質保証まで一貫して行える体制があるからこそ、YS BLADESのような世界一の製品が生まれるのですね。
Additive Manufacturing(AM)事業
小崎:AM事業では、樹脂材料を使った3Dプリンタ製品の製造を行っています。
この技術では、従来の加工方法では難しかった複雑な形状や、軽量化を求められる製品の製造が可能なんです。
例えば、試作品の製造では、デザインを忠実に再現することでお客様のイメージを具体化し、パーツフィーダーでは、工場のラインに最適化したカスタム設計を行っています。
また、サイン関連の製品も製造しており、細部にまでこだわったデザイン性の高いアイテムを提供しています。

業界の常識を覆した樹脂3Dプリンタ製パーツフィーダー「Sii-Karu」
3Dプリンタの大きな利点は、「試行錯誤のしやすさ」にあります。
試作品を短期間で作成し、実際に形状やサイズ感を確認したうえで、即座に改良を加えることができる点が、従来の工法に比べて凄く柔軟なんです!
さらに、自社製3Dプリンタ「3IxD(スリーイクシット)」を設計・開発し、材料(フィラメント)の製造も自社で行っています。
これにより、3Dプリンタの常識を覆す高品質とコスト競争力を両立させながら、お客様の多様なニーズにお応えしています。
この事業は、私たちにとって新しい挑戦ですが、モノづくりの可能性を広げる重要な取り組みだと考えています。

整然と並んだ山一ハガネ製3Dプリンタ「3IxD」
梅田:3Dプリンタまで自社で作っちゃうとは…ホント山一ハガネは常識にとらわれない会社ですね。
試行錯誤がしやすいというのは、製品開発において大きな魅力で、さらに自社で材料まで製造している点も非常に興味深いですね。
AM事業が今後どのように成長していくのか、凄く楽しみです!
CAST(Carbon-nanotube Added Surface Treatment)事業
小崎:CAST(キャスト)は、山一ハガネが開発した革新的な表面処理技術です。
この技術は、カーボンナノチューブをアルミニウムなどの表面に垂直に添加することで、熱伝達率の向上や流動抵抗の低減、濡れ性の制御といった特性を付与します。
例えばエアコンの熱交換器に適用することで、暖房時の熱伝達率を向上させ、省エネ効果を実現します。
CASTは、世界で唯一の技術として特許も取得しており、その独自性が際立っています。
さらに、冷蔵庫の冷媒に付着する霜の量を低減するなど、日常生活での利便性やエネルギー効率を向上させる効果も確認されています。
この技術は、白物家電分野から発電を含む重電分野まで、幅広い用途で応用可能です。カーボンニュートラル実現に貢献する手段として、国内外での活躍が期待されているんです!

CAST処理された熱交換器
CASTの技術力は、公益財団法人 名古屋市産業振興公社が主催する「2023年度工業技術グランプリ」において最高賞である「名古屋市長賞」を受賞するなど、高く評価されています。
また、産業界や研究機関との共同プロジェクトを通じて、さらなる技術進化と社会実装に向けた取り組みが進められています。

CAST開発者の田島さん
鈴木:CAST技術はこれからの省エネを拡大していくであろうとても凄い技術なんですね。
二つの特許取得をはじめ、工業技術グランプリ「名古屋市長賞」の受賞、家電メーカーとの取組発表など山一ハガネの研究開発グループのポテンシャルもまた計り知れない勢いを感じます。
AMに続き、まったく新しい分野に挑戦する会社の姿勢はまさに「Let’s Begin!」ですね。
チャレンジを否定しない山一ハガネの企業文化
土場:山一ハガネは色々な事にチャレンジされて凄いなって素直に思いました!
加藤:当社では「まずやってみる」精神が根付いており、挑戦を否定しない柔軟な企業文化が大きな特徴です。
社員一人ひとりの自主性を重視し、斬新なアイデアや新しい取り組みが歓迎されます。
社員のアイデアを会社に直接提案することができ、承認されればすぐにプロジェクトが動き出すんです。
この前向きで自由な環境は、当社独自の文化だと思っています。

挑戦を否定しない柔軟な企業文化が特徴と語る加藤さん
梅田:「YS BLADES」や焚き火台の「HITAKI」、最近ではMakuakeでやられていた「YS BLADESペーパーナイフ」など、自社製品も山一ハガネらしいユニークな製品ばかりですね。


山一ハガネの自社製品 究極の焚き火台「HITAKI」
加藤:結構苦労もしているんですよ…(笑)
プロジェクトの中には上手くいかなかったものもありますし、自由過ぎるが故の批判的な意見も正直一部ではあります。
それでも、会社としては「挑戦」そのものを重要視し、失敗を恐れず「まず行動する」ことに価値を置いています。
社員に自分のアイデアを試す機会を与え、挑戦する意欲を高める、AMやCASTが事業化できたのも、この企業文化の賜物ですよね。

Makuakeでクラウドファンディングに挑戦しプロジェクトが成立した
「YS BLADESペーパーナイフ」
機販社員が感じた「山一ハガネ」という会社
鈴木:実は私、山一ハガネを訪問するのが今回で3回目なんです。
訪問する度に事業の進化が目に見えて分かり、特にAM事業においては、前回の訪問時よりも多種多様なジャンルの製品が増えているという印象を強く感じました。
多くの現場を見学させていただきましたが、北海道と愛知県の産業構造の違いについても改めて考えさせられました。
愛知県は自動車産業を中心とした“モノづくり王国”であり、製造業が地域経済の中核を担っています。
一方、北海道は広大な土地を活かした農業や酪農、観光業が盛んであり、製造業の割合は全国平均と比べて高くはないものの、食料品製造業が主要な地位を占めています。
このような地域ごとの産業構造の違いは、ビジネスの在り方にも大きな影響を与えると改めて実感しました。

訪問の度に事業の進化を感じると語る鈴木
AM事業で見せて頂いたパーツフィーダーなどの製品は、北海道の食品工場などでも展開できる可能性があるのではないかと思いました。
ただ、実際に商材として取り扱うには、現在機販がお付き合いしている主要顧客とはまったく異なる業界ですので、実現のためには山一ハガネとのより一層の連携が不可欠だと思います。
山一グループとして、広報や人事・労務分野で始まっている連携をさらに深め、実際のビジネスにおいてもシナジーを発揮できればと良いなと思います。
特に、両社の若い人達が中心となって近い将来に向けてチャレンジしてもらえると嬉しいですね。
梅田:私は今回が初訪問でした。
これまでWebを通じたコミュニケーションはありましたが、実際に訪問してみると、事務所がどんな場所に建っているのか、工場の環境がどのようなものなのかといった点を肌で感じることができ、とても新鮮でした!
特に感じたのは、社員の皆さんがとても優しく親切だったということです。
これはおそらく加藤さんと小崎さんの存在が大きいのだと思いますが、お二人が積極的に現場の方に声をかけ、皆さんが快く対応してくださる雰囲気を作ってくださっているからこそ、会社全体にアットホームな雰囲気が漂っているのだと感じました。
山一ハガネのホームページで感じていた「アットホームさ」が、実際の訪問を通じてリアルに伝わり、素晴らしい会社だなという印象を強く持ちました。

グループ企業同士、絆を深めた梅田と土場
土場:各事業のスケールの大きさと、その現場の緻密さに驚きっぱなしでした!
それに社員の皆さんが良い方ばかりで、とても親切にしていただけて嬉しかったです。
山一ハガネが持つ独自の技術やノウハウが、ただの「先進性」にとどまらず、実際の顧客ニーズに深く根差したものだと実感しました。
また、山一ハガネ全体を通して感じたのは、「挑戦し続ける文化」が根付いているということです。今までのやり方で満足することなく、常に新しいアイデアや市場を開拓しようとする姿勢が社員一人ひとりから伝わってきて、とっても素敵でした!
これが、山一ハガネの強みを支える大きな要素なのだと思います。

社員の皆さんは気さくな方ばかりでした!
梅田:今回の訪問を通じて、グループ企業としてのつながりの重要性を改めて感じました。
これからもっと山一ハガネとの連携を深め、技術や知識を共有し、協力しながら新しい可能性を探っていければと思います。
それぞれの強みを活かし合いながら、様々な分野でのコラボレーションを通じて、お互いを高め合い、成長していけることを期待しています!

”山と海の物語”は、まだ序章にすぎない。
続きは「山一ハガネ」と「北海道機販」が共に紡いでいく。